最二小判 令和6年4月19日(令和4年(受)第1266号)

―株券発行前の株券発行会社の株式の譲渡を無効ではないとし、譲受人は譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使するこ{
Japan Corporate/Commercial Law
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1 本判決を取り上げる背景――M&A実務の視点

 国内M&Aにおいて、買収対象会社が過去または現在において株券発行会社である場合で、過去に株式の譲渡が転々と行われていながら、株券が一度も発行・交付されていないケースが見られる。会社法128条1項本文において、株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ無効と規定されていることから、このようなケースでは、M&A取引の売主は、過去に買収対象会社の株主であった者から有効に株式を譲り受けておらず、買収対象会社の現在の株主であるとは言えないのではないかが問題となる。これは、M&A取引の買主にとって、買収対象会社の株式を売主から有効に譲り受けることができない可能性があるという点でリスクとなる。また、M&A取引の売主にとっては、そもそもそのような状況では買収対象会社の株式を買い受けようとする候補者が現れない可能性があるという点でリスクとなる [1]

 このようなリスクについて、実務上は、①過去に行われた株式の譲渡について株券の交付をやり直すことにより過去の株式の譲渡の瑕疵を治癒する、②買収対象会社を当事者とする組織再編により過去の株式の譲渡について瑕疵があるとされ得る株式を消滅させる、③M&A契約上の表明保証および特別補償等の定めにより、かかる瑕疵が将来において顕在化した場合のリスクを売主と買主の間で分担する等の方法によりリスクの低減を図る工夫がされている。

 もっとも、株券不交付の瑕疵が問題となる過去の株式の譲渡は、同族企業における親族間の株式の譲渡等、譲渡の意思について譲渡当事者間において争いがなかったであろうケースも多く見られる。また、過去の株式の譲渡から相当の年数が経過しており、株券不交付の瑕疵を理由にその譲渡の無効を将来誰かが主張する事実上の蓋然性が低いと思われるケースも多く見られる。そのようなケースにおいて、株券不交付の瑕疵を理由に過去の株式の譲渡を一律無効であるとする必要性や合理性があるかというと、(会社法128条の規定があることを抜きにすれば)そうではないのではないかと感じることがあるのも事実である。

 最二小判令和6年4月19日(判例集未登載、裁判所HP。以下「本判決」という。)は、上記M&A実務との関係において、会社法128条1項本文の規定(株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ無効)の適用場面を限定する解釈を示した点で注目される。本判決については、本稿の作成時点では公刊物において事案の詳細が公開されておらず、また、事件は差戻控訴審に係属中であることから、本判決の射程を検討するには今後の裁判所の判断とその公開を待つ必要がある。そこで、本稿では、本判決の概要を紹介した上で、M&A実務への影響を検討する上での論点を整理する。

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Originally published 25 June 2024

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