1 はじめに
日本国内では、これまで AI の取扱の原則を検討したガイドラインが多数公表されており、AI にたずさわる事業者 としては、複数のガイドラインを参照しなければならない状況が生じてきた。このような状況を解消する必要がある こと、及び、これらのガイドラインでは、近時ブームとなっている生成 AI をさほど意識されているわけではないことを 踏まえ、現在、政府において新たな「AI 事業者ガイドライン」(「本 GL」)の検討が進められている(執筆者もドラフト 段階から参加している)。現在、2024 年 2 月中旬まで募集されていたパブリックコメントを踏まえた、本 GL のファ イナライズが進められているため、本記事ではパブリックコメント募集時の本 GL の文言を前提とする。また、本 GL はリビングドキュメントと位置づけられており、随時アップデートを行うことが想定されている。
2 本 GL の位置づけ
本 GL は、「人間中心の AI 社会原則」をベースとしつつ、「AI 開発ガイドライン」「AI 利活用ガイドライン」「AI 原則 実践のためのガバナンス・ガイドライン」の内容を統合するガイドラインとして作成されている。各ガイドラインとの関 係は、以下の図表((本 GL3 頁))のように位置づけられている。
3 本 GL の概要
事業者の行動指針となるべく、本 GL は、AI にたずさわる事業者が共通で遵守すべき以下の 10 大原則を説明 した上で(第 2 部)、事業者を、AI 開発者(第 3 部)、AI 提供者(第 4 部)、AI 利用者(第 5 部)に分類し、各原 則を遵守するための指針を踏まえてどのように行動すべきか、を具体的な留意事項をまじえて解説している。
【AI システム・サービスの開発・提供・利用を行う場面において、取り組むべき「7 つの原則」】
- 人間中心の原則
- 安全性の原則
- 公平性の原則
- プライバシー保護の原則
- セキュリティ確保の原則
- 透明性の原則
- アカウンタビリティの原則
【社会と連携して取り組むべき「3 つの原則」】
- 教育・リテラシーの原則
- 公正競争確保の原則
- イノベーションの原則
AI 事業者は、上記の 10 大原則とその指針を実践するために、経営層のリーダーシップの下、適切なガバナン スを構築することが求められる。もっとも、AI に関する技術やサービスの変化の速度は前例のないものであり、ガ バナンスが目指すゴールも常に変化していく。
そのため、以下の図表(本 GL25 頁)にあるように、「環境・リスク分析」「ゴール設定」「システムデザイン」「運用」 といった二重のサイクルを、マルチステークホルダーで継続的かつ高速に回転させていく、「アジャイル・ガバナン ス」の実践が期待されている。
Originally published Mar 26, 2024
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