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14 December 2020

Japan Renewable Alert 49: パブコメ開始-認定失効制度の詳細設計と運転開始期限の対象拡大

O
Orrick

Contributor

2022年4月1日からの導入が決まっている認定失効制度の詳細設計を含む省令等の改正の概要の案(以下「概要案」といいます。)が、2020年9月7日、
Japan Energy and Natural Resources
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1. 未稼働対策案パブコメに

2022年4月1日からの導入が決まっている認定失効制度の詳細設計を含む省令等の改正の概要の案(以下「 概要案」といいます。)が、2020年9月7日、意見公募(パブリックコメント)手続に付されました。意見の受付けは、2020年10月6日までです(こちらをご参照ください。)。

認定失効制度は、FIT/FIP認定を受けてから一定期間(以下「 失効期間」といいます。)以内に運転開始に至らない場合には、当該認定を失効させる制度であって、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号。いわゆるFIT法。以下「 再エネ特措法」といいます。)に対する「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第49号。以下「 改正法」といいます。)による改正(2022年4月1日施行)によって導入されるものです( Japan Renewable Alert 44ご参照ください。)。具体的な失効期間や既存案件の取扱いといった詳細設計は、改正法自体には定められておらず、経産省令で定めることとされています。

上記概要案は、従前から予定されていた(1)太陽光の未稼働対応新ルールの対象の拡張のほか、(2)認定失効制度の詳細設計、(3)運転開始期限の対象の拡張を内容とするものであり、2020年8月31日の経産省審議会(以下「 8月審議会」といいます。)での議論を基礎として、これら(1)ないし(3)に必要な電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則(平成24年経済産業省令第46号。以下「 再エネ規則」といいます。)及び電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の規定に基づき調達価格等を定める件(平成29年経済産業省告示第35号。以下「 調達価格告示」といいます。)の改正の案の概要を示すものです。

本稿では、概要案とその基礎となる8月審議会の議論をご紹介します。

2. 認定失効制度の詳細設計

認定失効制度に関しては、これまでお伝えしたように( Japan Renewable Alert 47及び 48をご参照ください。)、その詳細設計が不明であるために再エネ案件のプロジェクト・ファイナンスに深刻な影響が生じています。弊所では、2020年7月上旬、事業者及び業界団体からの意見を取りまとめ、経産省その他の関係先に対し、合理的な制度設計を迅速に明示するよう求める意見書を作成し提出するサポートをさせていただきました。経産省では、事態を重く受け止め、その後の同月22日の審議会及び8月審議会において一定の方針を示して委員らの賛同を得た上で、改正法における他の論点に先立ち、再エネ規則を改正する省令のうち認定失効制度に関する部分の概要が示されるに至りました。

8月審議会では、事務局から、長期未稼働案件のうち運転開始が期待される案件とそうではない案件とを区別して失効期間を定めるべきであり、運転開始が期待されるかどうかを、運転開始期限から1年後の時点における進捗をもって判断するという考え方が示されました。そして、失効期間について、運転開始期限までの期間(以下「 運転開始期間」といいます。)に追加的な期間(以下「 猶予期間」といいます。)をどれだけ付加するかという整理の下(失効期間=運転開始期間+猶予期間)、以下のような案が示されました(下図イメージ図(8月審議会の経産省作成の資料3(10頁)をもとに作成)参照)。

  1. まず、施行日後に運転開始期限が到来する案件に関しては、(a)運転開始期限から1年以内に系統連系工事着工申込みがされていなければ失効させる(猶予期間1年)、(b)運転開始期限から1年以内に系統連系工事着工申込みがされれば、猶予期間を原則的な運転開始期間と同期間(法アセスによる延長分は考慮しない。太陽光であれば3年、風力であれば4年)とする、さらに、(c)大規模案件については、運転開始期限から1年以内に、系統連系工事着工申込みがされ、かつ、「開発工事への準備・着手が公的手続によって確認」されれば、ファイナンスの特性に鑑みて実質的に失効リスクを除去するべく、猶予期間を調達期間と同期間とする。
  2. また、施行日前に運転開始期限が到来する案件については、運転開始期限の代わりに施行日を基準として、同様に(a)(b)(c)とする。

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上記考え方は、今回意見公募手続に付された概要案にも反映されており、これに基づき、失効期間は、たとえば太陽光では、上記場合分けに対応して、(i)(a)4年(法アセス対象であれば6年)、(i)(b) 6年(法アセス対象であれば8年)、(i)(c)23年(法アセス対象であれば25年)とされています。また、上記(c)における開発工事への準備・着手を確認する公的手続としては、全電源について、工事計画届出の受理又は法アセスにおける準備書についての勧告等がこれに該当するとされ、該当する手続がある場合には事業者の選択に委ねられるとされています。

3. 非太陽光案件の運転開始期限

運転開始期限の制度は、運転開始期間内に運転開始する計画であることを認定要件とし(再エネ規則5条1項9号等参照)、運転開始期限までに運転開始に至らない場合には超過した期間の分だけ調達期間が短縮される(調達価格告示2条1項の表備考欄のハ等参照)という制度であり、太陽光案件については2017年4月1日に、太陽光以外の再エネ案件(風力、中小水力、地熱、バイオマス。以下「 非太陽光案件」といいます。)については2018年4月1日に導入(施行)されています。そして、太陽光案件については、2016年度までに認定を受けた案件についても一定の要件の下に運転開始期限が設定されていますが、非太陽光案件については、2017年度までに認定を受けた案件には運転開始期限は設定されていません。

8月審議会では、これらの運転開始期限が付されていない2017年度までに認定を受けた非太陽光案件にも、運転開始期限を付する方針が示され、概要案では、これに必要な調達価格告示の改正案の概要が示されています。概要案によると、2017年度までに認定を受けた非太陽光案件については、公布日から起算して現行の運転開始期限と同じ年数の運転開始期限が導入されることとなります。運転開始期限を導入する調達価格告示の改正については、年内に公布される可能性があります。

4. 今後の対応

エネルギー法制の大きな変革期の中、再エネ事業に大きな影響を与える新制度の導入が数多く予定されています。再エネ事業者は、各種法令改正の内容や背景を正確に把握するとともに、時に当局に対して事業者の置かれた実態を伝えつつ、新しい時代を担っていくことが求められています。

Originally published September.09.2020

The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.

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