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21 October 2020

新特許法改正点概要

K
Kangxin

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2020年10月17日、第四次特許法改正案が全国人民代表大会常務委員会の審議で通過し、2021年6月1日から施行することになりました。
China Intellectual Property

2020年10月17日、第四次特許法改正案が全国人民代表大会常務委員会の審議で通過し、2021年6月1日から施行することになりました。2008年の第三次特許法改正から12年ぶりの法改正であり、幅広い内容が含まれており、部分意匠制度の導入、医薬品関連特許存続期間の延長、法定賠償金額の引き上げ、5倍賠責など外国企業からの予てよりの要望に応える内容も含まれており、中国における知財保護に大きな影響を与える内容となっております。

改正条文解釈は未だ発表されておりませんが、改正点の概要についてご参考まで纏めました。

1.最高5倍の懲罰的賠償を導入、法定賠償額の上限を500万元まで引き上げ、挙証責任を明確に、侵害訴訟の時効を3年まで延長(第71、74条)

繰り返し侵害、故意的侵害の制止が難しく、賠償額が低いことについては、予てより賠償金額の引き上げ要望がありました。今回導入した懲罰的賠償は大きな抑制力があると思われます。

 現在、中国の特許権侵害案件で賠償額を確定する際に、大部分は法定賠償額に適用されています。今回の改正は法定賠償額の上限が100万元から500万元に、下限が1万元から3万元に引き上げられました。したがって、将来には、法定賠償額が適用される多数の侵害訴訟において、損害賠償額も大幅に引き上げられると思われます。

また、今回の改正で、賠償額の確定に関わる挙証責任が明確にされました。これにより、「賠償が低い」、「挙証が難しい」問題が解決されることを期待できます。

更に、民法典の規定に統一するために、侵害訴訟の時効が3年まで延長されました。

改正内容

「......故意に特許権を侵害し、情状が深刻である場合、上記方法で確定した金額の1倍以上5倍以下で賠償金額を確定することができる。

特許権者の損失、侵害者の得た利益及び特許の実施許諾料の算定がともに困難な場合には、人民法院は特許権の種類、権利侵害行為の性質及び情状等の要素に基づき、3万元以上 500 万元以下の賠償を与えると確定することができる。

人民法院は賠償金額を確定するために、権利者がすでに全力を尽くして挙証しており、権利侵害行為に関連する帳簿、資料が主に権利侵害者に保有されている場合、権利侵害行為に関連する帳簿、資料の提供を権利侵害者に命じることができる。権利侵害者は提供せず、又は虚偽の帳簿、資料を提供した場合、人民法院は権利者の主張と提供した証拠を参考にして賠償金額を判定することができる。」

2、意匠の保護について

1)部分意匠に対する保護(第2条第2項)

部分意匠は米国、日本などの国では保護対象とされています。中国でも、GUI意匠等の保護に適応するために、今回の改正により部分意匠を保護対象に入れました。

2)「工業品意匠の国際登録に関するハーグ協定」への加盟のため、意匠権の存続期間を15年まで延長しました(第42条)。

3)国内企業に継続的にイノベーションすることを激励するために、意匠の国内優先権を導入しました(第29条第2項)。即ち、「出願人は、中国で意匠を初めて出願してから6ヶ月以内に、国務院専利行政部門に同一の主題についてまた出願を提出する場合、優先権を享有することができる。」

3、優先権書類副本の提出期限を延長(第30条)

現行の特許法に規定されている「出願してから3ヶ月以内に特許出願書類の副本を提出しなければならない」より、改正後の特許法における優先権書類の副本の提出期限が一層緩くされました。

改正内容

「出願人が発明特許、実用新型特許の優先権を主張するとき、出願時に書面により声明を提出し、且つ、初めて発明、実用新型を出願してから 16 ヶ月以内に最初に提出した特許出願書類の副本を提出しなければならない。出願人が外観設計の優先権を主張するとき、出願時に書面により声明を提出し、且つ、3ヶ月以内に、最初に提出した特許出願書類の副本を提出しなければならない。」

4、登録過程における不合理な遅延についての特許権存続期間の補償、医薬品特許存続期間の補償(第42条)


この二つの場合で特許権保護期間の延長を申請することができます。

1) 発明専利の出願日から起算して満 4 年、且つ実体審査請求日から起算して満 3 年後に発明専利権が付与された場合、国務院専利行政部門は、専利権者の請求により発明専利の登録過程における不合理な遅延について専利権の存続期間の補償を与える。ただし、出願人によりもたらされた不合理な遅延を除く。

2) 新薬の市場販売の審査・評価認可に時間を取られることへの補填として、中国で市場販売の認可を得た新薬に関連する発明専利について、国務院専利行政部門は、専利権者の請求により専利権の存続期間の補償を与える。補償の期間は、5 年を超えてはならず、新薬の市場販売の承認後の専利権の合計存続期間は、14 年を超えてはならない。

なお、具体的にどうのように特許権存続期間の補償制度を実施するか、また登録過程の「不合理的な遅延」をどのように認定するかは、今後、特許法実施細則及び特許審査指南で更に明確にされる必要があります。

今後、特許権存続期間の算定は簡単に出願日に10年、15年又は20年を加算することではなく、案件ごとに判断する必要があるようになりました。よって、特許期限の管理は更に複雑になりました。

5、オープンライセンス制度を追加、オープンライセンスの特許権者の特許年金を免除・低減(第50、51条)

この改正の趣旨は、特許のライセンスと応用を促進し、寝ている特許を目覚めることであると思われます。なお、特許のオープンライセンスの実施細則は更に明確にされる必要があります。また、企業にとって、特許を大件数に蓄積した場合、特許年金が大きな支出になりますが、新特許法が実施された後、一部の特許をオープンライセンスすることにより費用を節約できると同時に、収益も得られるようになります。

改正内容

「専利権者が如何なる企業・団体又は個人にもその専利を実施することにライセンスする意思を国務院専利行政部門に書面の方式で自発的に声明し、ライセンス使用料の支払い方式、基準を明確にした場合、国務院専利行政部門が公告を行い、オープンライセンスを実行する。実用新案、意匠専利にオープンライセンスの声明を提出する場合、専利権評価報告を提供しなければならない。

オープンライセンスの実施期間は、専利権者が納付する専利年金を相応に低減・免除する。」

6、医薬品に関わる紛争の早期解決制度(第76条)

この改正は中国の「医薬品特許結び付け制度」と言われています。これは製薬企業にとって重要な意義があります。2020年9月11に、国家薬品監督局総合司、国家知識産権局弁公室は「医薬品特許紛争早期解決制度実施弁法(試行)(意見募集稿)」について公開的に意見を募集し始めました。

改正内容

「医薬品販売認可の過程において、医薬品販売認可の申請人と関連の専利権者または利害関係人とが、登録が申請された医薬品に関する専利権の原因で紛争が発生した場合、関連の当事者は、人民法院に提訴し、登録が申請された医薬品に関連する技術方案が他人の医薬品の専利権の保護範囲内になるか否かについて判決を出すことを請求することができる。国務院医薬品監督管理部門は、規定の期間内に、人民法院の効力が生じた裁定・判決に基づいて、関連する医薬品の販売の承認を一時停止するか否かの決定を出すことができる。

医医薬品販売認可の申請人と関連の専利権者または利害関係人とは、登録が申請された医薬品に関する専利権の紛争について、国務院専利行政部門に行政裁決を請求することもできる。

国務院医薬品監督管理部門は、国務院専利行政部門と合同で、医薬品販売認可の審査と医薬品販売認可の申請の段階の専利紛争解決の具体的な結び付けの弁法を制定し、国務院に報告して同意を得た後に実施する。」

7、特許に対する行政保護の力度が強化された(第68~70条)

中国の特許保護はデュアル・トラック(複線)制度が実施されています。即ち、特許権侵害紛争について、特許権者は人民法院に起訴することもできるし、特許業務の管理部門に処理を請求することもできます。司法による保護の力度を強化するか、それとも行政による保護の力度を強化するかについて、知財業界で前から大きな争議がありましたが、今回改正後、新法第70条及び第60条により、国務院専利行政部門(国家知識産権局)に全国の重大な影響がある特許権侵害紛争を処理する権利を付与し、特許業務の管理部門(地方各級知識産権局)に当事者調査、現場調査、関連製品検査の権利を付与しました。

今後、企業は自社の状況により司法又は行政手段で侵害行為を制止することができます。なお、行政摘発は、適時性において利点があります。

8、実用新案と意匠の専利評価報告の申請主体を追加(第66条)

今回改正の前には、実用新案又は意匠に対する専利権評価報告を申請する主体は権利者又は実施権者のみでしたが、改正後、権利者、利害関係人又は被疑侵害者も自発的に専利権評価報告を出すことができるようになりました。これにより、専門権評価報告制度は手続き上で更に完備且つ中立になり、また、被疑侵害者にとって、権利者に対抗するルートが一つ増加しました。

9、職務発明の実施と運用を促進、企業に財産権によるインセンティブの実行を激励(第6条第1項、第15条第2項)

今回の改正では、職務発明の定義を変更せず、「所属単位の任務を遂行して、又は主に当該単位の物質的・技術的条件を利用して完成した発明創造」を残りましたが、「該単位は、法によりその職務発明創造の専利出願をする権利および専利権を処分し、関連発明創造の実施および運用を促進することができる。」という内容を追加しました。

また、追加された第15条第2項の規定により、「国家は、専利権が付与された単位が財産権によるインセンティブを実行し、株権、オプション、ボーナスなどの方式で発明者または設計者にイノベーションによる収益を合理的に分かち合うことを激励する。」即ち、奨励と報酬の二つの方式以外に、企業はその他の奨励方法を選んで職務発明の発明者又は設計者とイノベーションによる収益をシェアし、職務発明の形成と応用を促進することもできます。

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