2021年11月6日

11月5日に官報(Federal Register)で公告1された、米労働省・労働安全衛生管理局(OSHA)の、コロナウイルス・ワクチン接種及びウィルス検査 2に関する緊急暫定基準(ETS) 3の主要なポイント及び留意点は以下の通りです。より詳細な解説(英文)は以下のリンクをご覧ください。 https://www.mayerbrown.com/-/media/files/perspectives-events/publications/2021/11/osha-issues-emergency-temporary-standard-on-mandatory-covid19.pdf

1. ETS適用対象となる雇用主

  • 原則として、連邦政府機関及び州政府機関を除く、100名以上被雇用者(employees)を雇用している米国内の雇用主(employer)に対して、ETSが適用される。
  • 被雇用者数を算定するにあたり、フルタイムのみならずパートタイムの被雇用者も含むが、いわゆる人材派遣社員は含めない。(但し、派遣社員を100名以上雇用している人材派遣会社自体は雇用主として対象となる。)
  • ETSの規定の中には、被雇用者の数を算定する際に、駐在員、現地採用職員、スタッフ等を区別して扱うことの根拠となり得る規定は含まれていない。
  • 米連邦政府機関や州政府の機関、その他の特別な業種(医療サービス関係者、連邦政府調達契約に関与する者等)については、他の規則が適用され、ETSの適用対象外とされている。
  1. ETSの発効日、遵守日(compliance dates)等。4
  • ETSは、OSHAの行政規則の一部として、11月5日の官報公告と同時に法的効力を有する。
  • 対象となる雇用主は、官報公告日(11月5日)から30日以内(遵守日12月6日)に、原則としてETSで義務付けられている内容の全てを(但し後述のウィルス検査を除く)を実施することが義務付けられる。
  • 対象となる雇用主は、官報公告日から60日以内(遵守日2022年1月4日まで)に(ウイルス検査に関する規則を説明し)同日以降ワクチン未接種の被雇用者に定期的にウィルス検査結果を提出させる義務を履行しなければならない。 (要するに雇用主は、2022年1月4日以降、未接種の被雇用者よりウイルス検査の結果を毎週少なくとも一回は提出させなければならない。)
  1. 対象となる雇用主に義務付けられている主要な内容
  • ワクチン接種の義務付け、又は、ワクチン接種状況の確認及び未接種者のウイルス検査の義務付け : 雇用主は、(a) コロナワクチン接種を原則として被雇用者に義務付ける方針・規則を作成し、実施するか、又は (b)全被雇用者のワクチン接種状況を確認し、未接種の被雇用者に原則として毎週(少なくとも1回)ウィルス検査をさせ、かつ、職場でマスクの着用を義務付ける方針・規則を作成し、実施しなければならない。
  • ワクチン接種の確認 : 雇用主は、各被雇用者がワクチン接種を完了しているか否かを確認し、接種者からはその適切な証拠を提出させ、保存しなければならない。
  • ワクチン接種関連の休暇等の便宜 : 雇用主は、被雇用者のワクチン接種を支援するため、各接種ごとに、4時間を上限として、有給休暇を与えることを含む便宜を図らなければならない。副作用がある被雇用者には、疾病休暇を与えること等を含む便宜を図らなければならない。
  • 未接種者の定期検査 : 雇用主は、ワクチン接種を完了していない被雇用者に、少なくとも週に1回の頻度で、ウィルス検査を受けさせなければならない。(雇用主は、一般に検査費用を負担する義務は負わないが、自発的に費用負担をすることは認められる。)
  • 陽性者の扱い : 雇用主は、被雇用者の検査結果が陽性であった場合、(1)直ちに雇用主に報告させ、(2)陽性の被雇用者(ワクチン接種をしているか否かを問わず)を職場から隔離し、(3)職場復帰の条件が満たされるまでは、他の被雇用者が働いている場所で働かせてはならない。
  • 未接種者のマスク着用 : 雇用主は、ワクチン接種未完了の被雇用者に、職場でのマスク着用を義務付けなければならない。
  • 被雇用者への説明 : 雇用主は、(1) ETSに関する規則内容及び雇用主のETS規則実施方針、(2)CDC文書(Key Things to Know About COVID-19 Vaccines) 5、(3)雇用主による被雇用者への報復及び差別の禁止に関する情報、および、(4)故意に虚偽の説明や文書を提出した場合の刑事罰の適用に関し、被雇用者が理解できる内容の説明書を提供しなければならない。
  • OSHAへの通報: 雇用主は、職場関連のコロナウイルスによる死亡者(承知してから8時間以内)、及び、入院者(承知してから24時間以内)を、OSHAに報告しなければならない。
  • 記録の保存: 雇用主は、被雇用者のコロナウイルスワクチン接種、検査結果の記録を保存しなければならない。これらの記録は個人の秘密医療情報として取り扱わなければならない。被雇用者又は当該被雇用者の同意を得た他者の求めに応じ、閲覧・コピーを認めなければならない。また、ワクチン接種を完了した被雇用者数、および、被雇用者の総数に関する記録を、被雇用者の求めに応じ、提供しなければならない。

4. その他

  • 報復行為の禁止: 雇用主は、労働安全衛生法で被雇用者等に認められている諸権利 6を被雇用者等が行使したことに対して、解雇したり、雇用を拒否したり、その他の報復をしてはならない。
  • ただし、雇用主は、労働安全衛生法で保護されていない行為、活動をした被雇用者を懲戒処分の対象とすることは妨げられない。

例: ワクチン接種の状態を示す適切な文書を提出しないこと、

雇用主が求めるコロナウイルス感染定期検査の結果を提出しないこと、

ワクチン接種証や検査結果を偽造、改ざん等すること、

義務付けられたマスクの着用をしないこと。

  • ETSの規定に違反した雇用主に対しては、OSHAの規則に従って、通常の罰則規定 7が適用され得る。

5.関連資料

ETS関連資料は、以下のサイトで掲示されています。

OSHAプレスリリース

https://www.osha.gov/news/newsreleases/national/11042021

官報 (Federal Register) 公告 (2021年11月5日):

https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2021-11-05/pdf/2021-23643.pdf

OSHA FACT SHEET:

https://www.osha.gov/sites/default/files/publications/OSHA4161.pdf

ETS の概要 (Summary):

https://www.osha.gov/sites/default/files/publications/OSHA4162.pdf

よくある質問(FAQ):

https://www.osha.gov/coronavirus/ets2/faqs#accordion-81470-collapse8

Footnotes

1 https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2021-11-05/pdf/2021-23643.pdf

2 FDA承認のウイルス検査でPCR検査を含むがそれに限定されない。詳しくは行政規則の規定(29 CFR§1910.501(c))を参照のこと。

3 ETSは緊急暫定基準として11月5日に官報公告されたもので、今後、パブコメなどを踏まえ、改正される可能性がある。

4 米連邦控訴裁判所(第五巡回区)は、11月6日、(ETSの執行差止めを求めて提訴した原告側の申立てにより)ETS規則執行に関する緊急停止命令を下した。これによりETSの執行は同控訴裁の判断が下されるまで、とりあえず停止されることになったが、同控訴裁はETSの遵守日(12月5日または2022年1月4日)までには、何らかの判断を下すことが期待される。ETSの対象となる雇用主は、同控訴裁で近い将来臨時執行停止が解除された場合に迅速に対応できるよう、ETSの規定遵守体制を整えておくのが、リスク管理上望ましい。

5 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/keythingstoknow.html?s_cid=10493:covid%2019%20vaccination:sem.ga:p:RG:GM:gen:PTN:FY21

6 被雇用者が、ETSで規定されている休暇を求めること、合理的な個人用防護具(PPE)の提供を求めること、コロナウイルス感染の危険性やその他の危険な状況を雇用主又はOSHAに通報することなど。

7 一件の違反ごとに13,653ドル以下の罰金。故意又は繰り返し違反をした場合は、136,532ドル以下の罰金。29 CFR §1903.15(d). Build Back Better Actの法案が成立した場合、700,000ドル以下の罰金となる可能性がある。

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