1 はじめに

 2023年6月12日、欧州連合(EU)で製品安全に関する「一般製品安全規則(2023/998 General Product Safety Regulation)1」(以下「GPSR」という。)が発効し 2、2024年12月13日から適用が開始される。

 GPSRは、2002年に改正された「一般製品安全指令(2001/95/EC General Product Safety Directive)3」(以下「GPSD」という。)を廃止し、新たに制定されるものである。GPSDは、製造事業者などに安全な製品のみを市場に供給する義務を課す消費者保護規制であったところ、GPSRは、GPSDの基本的な枠組みを維持しつつ、デジタル化やオンラインマーケットプレイスの普及などの社会変化に対応し、より消費者保護を高めることを目的としている。

 本稿では、まず、GPSR制定の背景として、GPSDの概要を紹介し、GPSDからの変更点を中心にGPSRの概要を紹介する。

2 制定の経緯・趣旨

⑴ 一般製品安全指令( GPSD

ア GPSDの位置づけ

 EUにおける製品の安全性に関する一般指令としては、「製造物責任指令(85/374/EEC Product Liability Directive)4」(以下「PLD」という。)とGPSDが存在する。

 PLDは、消費者が欠陥のある製造物により損害を被った場合に、その製造業者や流通業者に対して民事上の責任を規定するものである。

 他方、GPSDは、製造業者および流通業者に対して「安全でない」製造物を市場に供給しない義務を課し、義務に違反した場合に刑事責任を課すものとして、PLDと区別される。

イ GPSDの概要

 ① 適用対象

 GPSDの適用対象となる「製造物」は、ビジネスにより供給された製品、消費者向け製品などのすべての製造物である。基本的に消費者向け製造物ではないものの合理的に予見できる条件のもとで消費者が使用する可能性が高い製造物も適用対象となる(GPSD Article 2(a))。

 ただし、特別の法律によりすでに規制されている消費者向け製造物(たとえば玩具など)には安全性に関する条文など一部条項は適用されない(GPSD Article 1, paragraph 2)。

 ② 安全性

 GPSDの下では、製造業者は「安全な製品」のみを市場に投入する義務を負う(GPSD Article 3, paragraph 1)。GPSDは「安全な製品」を「通常の、または合理的に予見できる使用条件の下で、その製造物を使用してもまったく危険がない、あるいはその仕様と矛盾しない最小限の危険しか与えないもの」と定義し、製品の特性、ほかの製品と併用することが予定される場合におけるほかの製品への影響、ラベル等の製品表示、製品を使用する際に危険にさらされる消費者の属性(特に子ども、高齢者)等の要素を考慮する(GPSD Article 2(b))。

 製品の安全を規制する特定のEU法(玩具安全指令、低電圧指令、化粧品規則など)が存在する場合、これらのEU法が適用されるが、これらのEU法でカバーされていない部分はGPSDの適用対象となる(GPSD Article 3, paragraph 2)。

 ③ 製造業者・流通業者の義務

 適用対象となる製品の製造業者・流通業者は、以下のような義務を負う。

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Originally published by Shojihomu Portal.

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