1. 要旨

2017年12月12日に、テレビ用ブラウン管の国際カルテルに関する最高裁判所の判決が出されました1。この事件は、国際カルテルに関して、公取委が外国事業者に対して行政処分(本件では課徴金納付命令)を行った最初のもので、それについて最高裁が判断したのも初めてです2。

本判決は、カルテルの合意が日本国外で行われ、合意の対象たる商品(ブラウン管)の顧客が日本国外の企業である場合でも、顧客の親会社が日本国内にあり、顧客の商品購入に相当程度関与していれば、日本の独禁法の適用があると判断しました3。

日本企業の海外子会社向けの商品やサービスに関するカルテルに影響がありそうです。

2. 事実

本件の事実は複雑ですが、概要以下の点が重要です。

  • カルテル参加者(テレビ用ブラウン管の製造事業者)は1社を除き、外国企業である。
  • 日本の電機メーカー(ブラウン管テレビの製造事業者、判決文では「我が国テレビ製造販売業者」)は、日本国内でテレビを製造しておらず、アジア各国に所在する自社の子会社や関連会社、製造委託先等(判決文では「現地製造子会社等」)がテレビを製造している。
  • したがって、ブラウン管製造事業者から実際にブラウン管を購入する顧客は、現地製造子会社等である。
  • しかしながら、我が国テレビ製造販売業者はそれぞれ、現地製造子会社等の部品調達やテレビの製造計画の指示や承認を行うほか、現地製造子会社等が購入するブラウン管について、ブラウン管製造事業者と間で、価格や数量を一括して交渉していた。
  • 我が国テレビ製造販売業者は、現地製造子会社等が製造したテレビの大部分を購入し、国内外で販売していた。
  • カルテル参加者は、我が国テレビ製造販売業者の交渉の際に提示する、現地製造子会社等向けブラウン管の販売価格の最低目標価格等を設定する旨合意した(以下、「本件合意」といいます)。
  • 本件合意は日本国外でなされた。

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Footnotes

1 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/299/087299_hanrei.pdf

2 2017年12月13日のニュースレター「2017年の独占禁止法の動きと2018年の展望」でも、速報として採り上げています。

3 本件はいわゆる「域外適用」の問題として説明されることがありますが、本書では誤解を避けるため「域外適用」という文言は用いません。  

Because of the generality of this update, the information provided herein may not be applicable in all situations and should not be acted upon without specific legal advice based on particular situations.

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