国際商事仲裁は、長い間、国際的な資本移動に不可欠の存在とされてきました。これは、紛争が生じた際、いわゆるNew York 条約に基いて、取引当事者が、合意により選択した仲裁地における仲裁手続において執行可能な仲裁判断を得ることができる可能性が高いことによります。しかし、国際的な紛争解決手段としての国際仲裁の独占状態は変わりつつあります。

2015年10月1日、国際裁判管轄の合意に関するハーグ条約(Hague Convention on Choice of Court Agreements)が発効しました。この条約の目的の一つは、当事者の合意した裁判所による判決を批准国において執行可能とすることにあります。この条約は、2005年6月に取り決められ、その2年後にメキシコが批准してから長くメキシコが唯一の批准国となっていましたが、2015年6月にEUが批准し、ついに効力を有するに至りました。なお、批准には至っていませんが、同条約には他に米国が2007年に、また、2015年1月にSICC(シンガポール国際商事裁判所)を設立したシンガポールが同年3月に、それぞれ署名しています。

同条約の効力の発生は、国際的な執行手続において裁判所の判決に仲裁判断と同等の基盤を与えるための重要な第一歩となるといえます。日本企業にとっても、今後同条約の批准国が増加することとなれば、たとえばSICCの利用の可能性なども含め、紛争解決手続の選択肢が大きく広がると考えられます。

詳細は、Jones Day Commentary " The Hague Choice of Court Convention Takes Effect, and With It Greater Certainty for International Transactions" (オリジナル(英語)版)をご参照ください。

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